包丁の切れ味|よく切れる包丁



普段何気なく包丁を使っている方も多いかと思いますが、その「切れ味」次第で料理の味や出来栄が変わるという事は良くあります。あまり切れない包丁で食材をつぶしてしまうと料理の味を落とす事になるかもしれません。

こちらのページではいろんな視点から包丁の切れ味について解説し、またお薦めの「よく切れる包丁」もご紹介したいと思います。他にもよく切れる包丁について紹介しているサイト、ブログがありますが、当サイトでは最上の切れ味に拘ります。どのブログでも紹介されているような一般的なブランドは取り上げていませんが、本当に切れ味に拘りたい方には参考にして頂けるかと思います。

また、「よく切れて錆びにくい包丁が欲しい」、「錆びても良いのでとにかく最高の切れ味の包丁が欲しい」などお好みもあるかと思いますので、ステンレス、ハガネなど素材別にご紹介致します。お好みの一本を見つけて下さい。

目次

  1. 包丁の切れ味は何で決まる?
  2. 切れ味最強!青紙スーパー鋼の包丁
  3. よく切れて耐錆、粘りのバランスも良いV金10号
  4. よく切れて錆にも強い!銀紙3号の包丁
  5. ステンレス最高の切れ味|新素材のZDP−189
  6. よく切れる包丁のデメリット
  7. まな板で切れ味長持ち
  8. 使い易いサイズの包丁を
  9. よく切れる包丁のメリット



よく切れる包丁とは

どんな包丁が良く切れるのか? 切れ味は何で決まる?

ズバリ!鋼の硬さで決まります。

包丁は主に鋼で出来ていています。炭素ハガネ、ステンレスなどいろんな種類、いろんな呼び名がありますが、これらは全て鋼です。セラミックなどの特殊な材料で出来ている包丁も一部にありますが、ほとんどの包丁は鋼で出来ています。

そして、よく切れる包丁かどうかはこの鋼の硬さで決まります。もちろん、その包丁がどのように研がれているか、ハガネなのかステンレスなのか、・・といった事も関係しますが基本的に切れ味は硬さで決まります。ですので本当に切れる包丁をお探しなら硬い鋼の包丁を選ぶべきでしょう。

では硬さはどのように調べれば良いのでしょうか?

硬さの単位(HRC)の値を見れば分かります。

一般的なステンレス包丁の硬度はHRC58前後くらい。60以上あればかなり切れる包丁と言えるでしょう。中にはHRC67などという非常に硬い鋼も存在します。

硬さの単位(HRC)の表示がない場合は

HRC値の表示がなくても、ハガネなら青紙(青鋼)、白紙(白鋼)、ステンレスであれば粉末ハイス、V金10号(VG10)、AUS10、銀紙三号・・といった素材で出来ていれば「硬くて良く切れる包丁」と言えます。包丁の製作工程によってHRC(硬度)は変動しますので「この鋼材で作った包丁の硬度はHRC○○」などと単純には言えないのですが、これらの鋼材の硬度が高い傾向は間違いないですし、包丁の切れ味は「鋼材名」と「HRC値(硬度)」でみるのが一番分かりやすいです。

また、硬い刃(よく切れる)と柔らかい刃(切れにくい)の他に、錆びやすいもの、錆びにくいもの等、素材によっていろんな特徴があります。次の項目ではHRC値の他、鋼材ごとの特徴も踏まえて様々な包丁をご紹介しますので、お好みの一本を見つけて頂けたらと思います。

ちょっと余談ですが・・
【包丁雑学】
鋼(ハガネ)とは、鉄に炭素を加えたものです。
鉄+炭素=ハガネ

鉄に炭素を添加してより硬くしたものがハガネです。
鉄=炭素を 0 〜 0.04% 含んだもの
ハガネ=炭素を 0.04〜 2.1 % 含んだもの
(炭素の含有量で鉄とハガネに分類されています。)

そして、この炭素の含有量が増えるほど硬く、よく切れるハガネ(包丁)になります。
またクロムの含有量が高いほど錆びにくいハガネ(包丁)になり、クロムを11%以上含んだハガネがステンレスと呼ばれます。


切れ味最強・青紙スーパーの包丁

青紙スーパーは日立金属で製造される包丁用のハガネです。日立金属では多種多用な鋼が製造されておりその最高峰に位置するのが青紙スーパー。硬度HRC=65〜67。 青紙スーパーの包丁は日本で作られる包丁の中でも最も硬く、つまり最も切れる包丁という事になります。
鋼の硬さ、切れやすさをクラス分けした図
※C=炭素が増えるほど硬く、よい切れ味に
※Cr=クロムが増えるほど、錆びにくくなります。

■ 禅鳳作 青紙スーパー黒打三徳包丁

よく切れる青紙スーパー鋼の三徳包丁とその箱
三徳包丁 刃渡り18cm
日本 高知県産

両サイドは研ぎやすさと耐錆に優れたステンレスで覆われ、中心には日立金属製炭素鋼の最高峰、青紙スーパーを使用。刃側は鋭く磨かれ、峰(背)側は熱処理されたままの自然な黒地色を残した、昔ながらの伝統的な包丁作りの味わいを感じられる仕上がりとなっています。刃渡り21cmの牛刀もあります。>詳細を見る >牛刀はこちら


■ 禅鳳作 青紙スーパー鎚目 三徳包丁


三徳包丁 刃渡り18cm
日本 高知県産

上記と同じ職人さんが作った包丁です。こちらは鎚目仕上げ(表面が凸凹)になっていますので食材をくっつきにくくする効果も。両サイドがステンレス鋼で覆われていますので錆びにくくお手入れ簡単。こちらの青紙スーパーの包丁ですのですごく良く切れます。>詳細を見る

■ 禅鳳作 青紙スーパー黒打・和牛刀


牛刀和包丁 刃渡り21cm
日本 高知県産

上記でご紹介の禅鳳作青紙スーパー・シリーズの和包丁タイプ。切れ味は上記2本と同じで、重さは若干軽量になります。八角ウォルナットの柄が付けられ見た目もシャープでカッコよい!海外のお客様からも人気の一品です。>詳細を見る


■ 盛高 青紙スーパー三徳包丁


三徳包丁 刃渡り18.5cm
日本 熊本県産

肥後国(現在の熊本)で代々鍛造刃物を作っている盛高鍛冶刃物さんの三徳包丁。鋼を地鉄で挟む日本刃物の伝統的な製法で作られています。錆びますので使用後水分をふき取る等お手入れが必要ですが、柄に入る部分だけはステンレスで出来ていますので柄腐れしにくく清潔に使えます。>詳細を見る


■ 越前山本作 青紙スーパー牛刀


牛刀 刃渡り 21cm
日本 福井県産

福井県越前刃物の伝統工芸士、山本直さんの鍛造牛刀です。刃渡り21 CM、 ずっしりとした重みがあり実際に手に取るとなかなかの迫力があります。峰の厚みや鋼の色合いなどからはいかにも手打ちといった風合いで、鍛造刃物がお好きな方などは手に取ると感動されます。もちろん切れ味も素晴らしいです。>詳細を見る


■ 藤原照康 青紙スーパー三徳包丁


三徳包丁 刃渡り 16.5cm
日本 東京産

明治時代から四代続く東京の包丁製作所、 藤原照康刃物の総手造り包丁です。こちらも切れ味に定評ある青紙スーパーを使用。表面加工は打ち出し仕上げ。手作り包丁らしいゴツゴツした味わいある見た目も魅力の一品です。>詳細を見る


【青紙スーパーについての補足】
日立金属の刃物鋼には、黄紙、白紙、青紙などのシリーズがあり、農耕具などに利用されるのが黄紙、昔から伝統的に和包丁に使われているのが白紙、そしてさらに純度を高め硬くしたのが青紙。青紙シリーズには1号、2号などの種類があり、中でも最高の硬さと品質を誇るのが青紙スーパーです。青紙スーパーはステンレスではありませんので多少錆びますが、良く切れます。それに切れ味が持続します。

あまり硬すぎると砥石で砥ぐのが難しいと思われるかもしれませんが、このようなハガネの包丁はステンレスよりも研ぎやすいです。砥石との相性がよく研ぎ心地は快適!是非砥石での包丁研ぎも楽しみながらご愛用下さい。最高の切れ味を求める方には、この青紙スーパーの包丁がお薦めです。


よく切れて、耐錆、粘りのバランスも良いV金10号の包丁

ひと昔前までは、「ステンレスの包丁は錆びに強いが、ハガネの包丁ほど切れない」と言われてきました。しかし現在はハガネ並みに硬くて良く切れるステンレス鋼が沢山あり、切れ味に拘る料理人もステンレスの包丁を使う時代へと変わってきています。そしてその代表格がV金10号。良く切れて、錆びにくく、粘りがあり、永切れする(よい切れ味が続く)最も人気のある硬質ステンレスです。硬度HRC=60〜61

VG10号の包丁には次の2種類があり
(1)刃身1枚まるごとV金10号の包丁


(2)中心にだけVG10号が入り、まわりは違う種類の鋼で覆われた包丁。いわゆるダマスカス包丁や割込み包丁など。


この内お薦めなのは(2)のV金10号ダマスカス!複数の素材を適切に重ね合わせることで、次のような効果があると言われています。

  1. 折れず曲がらず(強靱性)・・・日本刀のように、硬いハガネ部が軟質部で包み込まれて曲がりにくく折れにくい性質を持つ

  2. 加工が容易・・・クラッドされた構造体は、鍛造・研削(刃付、研磨)等の加工が容易になる

  3. 刃先の耐腐食性が向上・・・適切な材料組み合わせ(腐食電位差)により、刃先の耐腐食性が向上

  4. 切れ味・永切れ性が向上・・・鍛圧されたハガネ部は、組織が緻密になり切れ味・永切れ性が向上

※武生特殊鋼(株)の資料より。(武生特殊鋼はVG10号の製造販売元です)

以下代表的なVG10号ダマスカスの包丁をいくつかご紹介しますのでご覧ください。

■ 源虎徹 VG10号ダマスカス 三徳包丁


三徳包丁 刃渡り18cm
日本 岐阜県産

こちらは岐阜県関市産の有名なダマスカス包丁。比較的軽量に作られており力のない方でも楽にサクサク使う事ができます。もちろん切れ味抜群。錆にも強いですのでお手入れも簡単です。>詳細を見る


■ 剣謙心 VG10号ダマスカス 三徳包丁


三徳包丁 刃渡り17cm
日本 新潟県産

鍛冶職人が新潟三条鍛冶の伝統を今に伝える一品。高級柄が付けられた和包丁スタイルの三徳包丁です。>詳細を見る


■ 佐治作 VG10号ブラックダマスカス 三徳包丁


三徳 刃渡り17.5cm
日本 福井県産

越前打刃物の伝統工芸士、佐治武士氏作のダマスカス三徳包丁。鍛造のリアルな質感を残した、荒々しくも美しい仕上がりとなっています。ハンドルに使われているアイアンウッドは高級感があり握り心地抜群。見た目も美しい工芸品としての価値もある一品です。>詳細を見る


■ 彩雲 VG10号ダマスカス ペティナイフ


ペティ・ナイフ 刃渡り15cm
日本 岐阜県産

強靭なブレードにマイカルタ製の精巧なハンドル。この彩雲シリーズは重厚な作りが魅力で海外の料理人にとても人気なのですが、日本人にはすこし重いでしょうか。しかし、こちらのペティやその下のパーリング・ナイフは、彩雲ならではの重厚な作りそのままに軽量に出来ており、日本の方からも使いやすいと大人気。それに刃がハマグリ型に研がれており良い切れ味が長続きします。>詳細を見る


■ 彩雲 VG10号ダマスカス パーリングナイフ


パーリング・ナイフ 刃渡り9cm
日本 岐阜県産

 >詳細を見る


■ 堺孝行 VG10号ダマスカス三徳包丁


三徳 刃渡り18cm
日本 大阪産

海外のユーザーからの人気も高い大阪の包丁メーカー、堺孝行のVG10ダマスカス包丁。こちらはその中で最も定番の三徳タイプ。ある程度の重みがあり、プロ仕様の他男性の趣味の料理などにもお薦め。>詳細を見る


青紙スーパーのような力強い切れ味で錆にも強い!銀紙3号の包丁

日立金属には、青紙シリーズや白紙シリーズの他に、”銀紙”というステンレス鋼のシリーズがあり、銀紙3号はその最高峰の鋼です。硬度HRC=60〜61

よく切れて錆びにも強いという点は、V金10号など他の硬質ステンレスと同じなのですが、こちらの銀紙3号は(青紙のような)炭素系の鋼にも近い性質を持っており、ザクリと食材に食い込む力強い切れ味を感じて頂けます。またステンレスのわりに研ぎやすいというのも良い点。青紙スーパーの最高の切れ味を試してみたいけど錆びやすいのはイヤ、という方にはこの銀紙3号の包丁がお薦めです!

■ 禅鳳作 銀紙三号 三徳包丁

切れて錆にも強い銀紙3号の三徳包丁とその箱
三徳包丁 刃渡り 18cm
日本 高知県産

趣のある梨地仕上げの三徳包丁。銀紙3号は他の硬質ステレンスと同じ硬度ながらより研ぎ易いという利点も。また日立金属性であるため、白紙、青紙といった炭素ハガネにも通じるような力強い切れ味を感じて頂けます。>詳細を見る


■ 堺實光作 銀紙三号 三徳包丁


三徳包丁 刃渡り 16.5cm
日本 大阪府産

こちらはほうの木の柄の付いた、和包丁スタイルの三徳包丁です。>詳細を見る


ステンレスの新素材ZDP−189

日立金属が誇る高品質ステンレス刃物鋼の銀紙3号をベースに作られた究極に硬いステンレス鋼。 銀紙3号でも充分に硬く、良く切れプロ仕様としてもまったく問題ないのですが、さらに硬い新素材が開発されました。ステンレスながら硬度HRC=65〜67と青紙スーパーにも迫る硬度を持ちもちろん切れ味抜群。切れ味と耐サビ、両方が揃った最強の鋼と言えるかもしれません。しかし硬すぎて砥ぐことはほぼ不可能ですので(硬いハガネは砥げますが硬いステンレスは砥げません)、製造メーカーに送って砥いでもらう必要があります。

■ 九佐吉作 ZDP189 三徳包丁


三徳包丁 刃渡り 18cm
日本 佐賀県産

ZDP189の最大の特徴でもある『サブゼロ処理の上をいくクライオ処理』により、硬度67前後と、ステンレス鋼のなかでも最高クラスの硬度。それだけ切れ味もすごいです。(大変砥ぎにくくなっております。砥ぎ師泣かせの包丁です。研ぎに関しては、弊社ご郵送でご要望されることをお勧めいたします 〜メーカーさんのwebより)と研ぎ直しもされる良心的なメーカーさんです。研ぎ直しが必要な時は郵送して研いでもらうのがよいでしょう。1回700円〜 ※2020/03/19 修正 現在メーカーさんでの研ぎ直しはされていないようです。 >詳細を見る


■ 義平作 ZDP189 三徳包丁


三徳包丁 刃渡り 18cm
日本 新潟県産

新潟県三条市で五代続く包丁鍛冶。四代目と五代目のお二人で作られています。>詳細を見る


よく切れる包丁のデメリット

「硬い鋼ほどよく切れる」とご説明してきましたが、(ステンレスも含め)鋼は硬いほど欠けやすくなります。 こちらのページでも取り上げている青紙スーパー、V金10号、銀紙3号、スウェーデン鋼・・・のような高級鋼には「粘り」があり、硬いわりには欠けにくく出来ているのですが、それでも硬いほど欠けやすくなる傾向はあります。

通常の食材をスパッと鋭く切るのには適していますが、冷凍品や、骨、カボチャといった硬いものを力で切ろうすると刃こぼれが出来る可能性もありますのでお気をつけ下さい。(冷凍品はその温度差によっても欠けやすくなります)もし刃こぼれが出来てしまったら砥石で研いで修正してください。


まな板で切れ味長持ち

お使いのまな板は木製、プラスチック製のどちらですか?

食材を切るたびに包丁はまな板にあたり、そのたびに刃は摩耗し切れ味が落ちていきます。木製のまな板はプラスチック製のものより柔らかく刃が摩耗しませんので、もしプラスチックのまな板をお使いでしたら木製のまな板に変えるだけで切れ味を長持ちさせる事ができます。


使い易いサイズの包丁を

包丁が大きすぎたり小さすぎたり、重すぎたりすると、せっかくの良く切れる包丁も実力を発揮する事ができません。出来れば、新しい包丁をご購入の前に今お使いの包丁の長さと重さを調べ、それと比べながら購入されるのがおすすめです。


よく切れる包丁のメリット

最後に、切れる包丁のメリットをご紹介したいと思います。よく切れる包丁を使うと沢山の良いことがあります!これを見て切れ味の良い包丁を使いたいと思って頂けたら幸いです。

  • 素材の味を活かす・・・切れ味の落ちた包丁で食材の断面を傷つけると組織が壊れ新鮮さやうま味を逃してしまいます。慶応大学系の研究機関の実験でも、切れ味のよい包丁で切ると実際に食材のうま味が増えたという結果が出ています。包丁の切れ味次第で料理の味も変わります。

  • 見栄え・・・トマトのような柔らかい食材もスパッときれいに切られていると料理の見栄えも良いですね。

  • ストレス軽減・・・食材を切るときに包丁の切れ味が悪いとイライラしてしまいます。切れ味が良い方がストレス少なく料理して頂けるかと思います。

  • 怪我防止・・・包丁で怪我をする多くの場合は力んで使う事が原因です。また切れ味の悪い刃が食材の上をすべると思わぬ方向へ行き、これも大きな怪我につながります。大怪我をしない為にも包丁の切れ味は大切です。

  • その他・・・玉ねぎを切るとき涙が出にくい、料理がうまくなるなども挙げられます。